地縁団体の認可とは

制度の概要
これまで、自治会や町内会などは、いわゆる「権利能力なき社団」と位置付けられ、法人格が認められていませんでした。このため、町内会館など保有する財産は構成員の「総有」とみなされ、団体名義での不動産登記はできず、代表者個人の名義にするか、構成員全員の共有名義で登記されてきました。
しかし、代表者個人名義の登記では、相続の際に個人所有の財産と誤解して処分されてしまったり、全員共有名義の登記では、共有者が多数に上り、変更の際の手続きが煩雑になったり、債権者による差し押さえを受けたり、といった、様々な問題が生じていました。
そこで、このような問題に対処するため、平成3年4月に地方自治法が一部改正され、いくつかの要件を満たした自治会や町内会を「地縁による団体」として法人格を付与する制度が導入されました。
これにより、認可を受けた自治会や町内会などは「認可地縁団体」として、土地・集会所などの不動産を団体名義で登記できるようになり、あわせて、団体の活動に資する財産について、団体名義で所有・借用できるようになりました。
総務省の統計によれば、平成25年4月1日現在で、全国に298,700団体あるとされる地縁団体の内、44,008団体(全体の14.7%)が地縁団体の認可を受けており、この数は今後も増加していくものと考えられます。
対象となる団体
この認可制度の対象となるのは、
○ 地縁による団体(地縁団体)
  町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体
です。したがいまして、
× 構成員に対して住所以外の条件を求める団体
  (例:子供会・青年団・老人会(年令の制限)、婦人会(性別の制限)など)
× 活動の内容が限定された団体
  (例:スポーツ活動のみや環境美化活動のみを行う団体、趣味やサークル活動のみを行う団体など)
は対象となりません。
加えて、団体名義での不動産登記が可能になるという目的から、
× 不動産等の保有を目的としない団体
も対象となりませんのでご注意ください。
認可のための要件
自治会や町内会などが地縁による団体の認可を受けるためには、以下の4つの要件を全て満たすことが必要です。
「その区域の住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理等良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とし、現にその活動を行っていると認められること」
地域的な共同活動とは、スポーツや社会福祉など特定の活動ではなく、広く地域社会の維持・形成に資する活動を言います。具体的には、清掃・美化活動・防犯・防災活動・集会所の管理運営や親睦行事など、一般的な自治会・町内会活動がこれに当たり、規約に明記することが必要となります。
また、自治体によっては、「現に活動を行っていると認める」ために、一定期間の活動実績を求める場合もありますので、注意が必要です。
「その区域が、住民にとって客観的に明らかなものとして定められていること」
河川・道路等で区域が画されているなど、容易に自治会や町内会などの区域・範囲がわかる状態であることが必要です。他の自治会や町内会などの区域と重なる場合は、事前に調整して重ならないようにする必要があります。
また、飛地については、地域としてのまとまりが歴史的な実態として認められれば、認可の対象となることもありますので、事前によく確認してください。
「その区域に住所を有するすべての個人は、構成員となることができるものとし、その相当数の者が現に構成員となっていること」
その区域に住む人すべてが加入できる必要があります。世帯を単位とすることは認められず、また区域に住所があること以外に、年齢・性別・国籍等の条件をつけてはいけません。
なお、「相当数」の目安としては、その区域の全住民(自治会・町内会等に加入していない人を含む)の過半数と考えられています。
規約を定めていること
規約において、①目的、②名称、③区域、④主たる事務所の所在地、⑤構成員の資格に関する事項、⑥代表者に関する事項、⑦会議に関する事項、⑧資産に関する事項、が定められていることが必要です。
これ以外の事項についての定めを置くことは問題ありません。また実質的に必要な項目が定められていれば、規約の名称に制限はありません。
 
認可地縁団体のメリット・デメリット
法律上の権利義務の主体となることができ、法人格を有します。
不動産登記において、団体の名義で登記ができます。
規約に定められた活動に関し、必要有益であると考えられるものであれば、不動産等を保有する以外にも権利を有し、義務を負うことができます。
地方公共団体その他の行政組織の一部となるわけではありません。
(認可地縁団体は、認可により権利能力を取得した後も、任意に住民により組織された団体であることに変わりなく、法律上も公法人とはされていません。)
正当な理由がない限り、その区域に住所を有する個人の加入を拒むことはできません。
民主的な運営の下に、自主的に活動するものとし、構成員に対し不当な差別的取扱いをしてはなりません。
(団体の運営のあり方は、認可の前後によって変わるものではありません。)
特定の政党のために利用してはなりません。